合成の誤謬(ごびゅう) 2017 12 3

「貯蓄のパラドックス」
 日本社会においては、
節約して貯金をすることが美徳とされてきましたが、
これは、経済に悪影響を及ぼします。
 たとえ一人一人の行動は正しくても、
全体でみれば、間違っている。
つまり、日本経済は、「合成の誤謬」という状態になっています。
 貯蓄して消費活動しないということは、
商品が売れないということを意味しますので、
景気は低迷するでしょう。
 そうなると、小売業のみならず、
メーカーも経営不振になってきます。
 ここで疑問を持つ人がいるでしょう。
かつて高度成長時代は、国民の多くが貯蓄に励んでいたのに、
日本経済は、急拡大したのではないかという疑問です。
 これに対しては、このように説明できます。
豊富な貯金は、銀行の資金力を増やし、
銀行は、その資金を企業に融資する一方で、
企業は、銀行から積極的に借り入れて設備投資を拡大させたのです。
 その結果、私が学生だった頃は、
あちこちに工業団地ができ、雇用も増えました。
 それでは、かつてのように、
銀行は、積極的に融資をして、
企業は、積極的に借り入れをすればよいのではないかと思うでしょう。
 しかし、今、日本が直面している問題は、少子高齢化という問題です。
少子高齢化によって、市場規模は縮小していきます。
こうなると、企業経営者は、設備投資に関しては慎重になります。
 一方、対照的なのが、アメリカです。
アメリカ人から日本を見れば、
「そんなに貯金が楽しいのか」と見えるかもしれません。
アメリカには、借金をしてまでも消費をするという「借金文化」があるからです。
多くの日本人は、アメリカ人の消費活動に違和感を覚えるかもしれません。
 しかしながら、この20年間で、
アメリカのGDPは、急激に拡大しました。
20年間で、GDPは、2倍以上になっています。
 税収は、単純に考えれば、
GDPに税率をかけたものとなりますので、
財政的にも豊かになっています。
 一方、日本のGDPは、
この20年間、ほとんど変化がありません。
 確かに、アメリカは、先進国の中で唯一、
人口が大きく増えています。
今後も、増え続けるでしょう。
市場としては、魅力的です。
 そういう特殊要因がありますが、
やはり、旺盛な消費活動が、アメリカ経済を発展させているのです。
 実は、中国の経済も、アメリカ経済と似たようなものですので、
中国のGDPも急拡大しました。
 かつて、日本のGDPは、
アメリカのGDPに追いつくのではないかと言われた時代がありましたが、
今となっては、はるか先に、アメリカと中国のGDPは行ってしまいました。
 このままでは、アメリカと中国という高層ビルディングの谷間に、
雑居ビルの日本があるという状態になってしまいます。

ラフマス 2017 12 3

 贅沢品を買う「すべての人々」は、
「すべての貧しい人々」の生活を支えているが、
守銭奴は、貧しい人々を貧苦のうちに死なせている。
(16世紀のフランスの経済学者 B・ラフマス)

 たとえば、あなたが雑貨屋を営んでいたとします。
毎日、100円や200円の物ばかり売れて、うれしいでしょうか。
 できれば、4980円の雑貨が売れてほしいと思うでしょう。
本音を言えば、店の奥にある9870円の雑貨が売れてほしいと願っているでしょう。
さて、4980円や9870円の雑貨を買う人たちは、どういう人たちか。

書名 消費低迷と日本経済
著者 小野 善康  朝日新聞出版

 著者は、こう指摘します。
かつてのような経済の健全な循環を回復するには、
お金を使うことが必要になる。
 しかし、物があふれる豊かな社会を築いた日本では、
お金を使うのに知恵や努力がいる。
 そうした努力を避け、
何もしなければ、お金はたまる。
 しかし、物が売れず、経済が停滞するから、
将来不安が広がり、ますます蓄財に走ると指摘します。
























































































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